08年10月以降の「100年に1度」といわれるような
大不況の到来で、従来にない急激で大幅な景気後退に
見舞われた企業が現在行っている雇用調整は、
非正規社員の契約の解約から始まり、正社員の人員削減へと
広がりを見せ始めています。
今回の景気悪化による企業業績の大幅な落ち込みは、
ある意味において、企業にとっては災難に近いかも
しれません。
そして、それによって行わざるを得なくなった人員削減も、
解雇される人にとっては災難なのです。
被雇用者には特に非がなくても、会社にふりかかった災難・危難を
被解雇者に転嫁しない限り、会社が生き延びていくことが
できないのです。
企業が生き延びていくことができなければ、より多数の
犠牲者が発生してしまい、被害が膨らんでしまいます。
企業にとってはやむを得ない措置なのです。
整理解雇の4要件という概念は、昭和48年暮れの
第1次オイルショックに端を発した不況の中で、
主に重厚長大産業によるブルーカラーを中心とした
正社員の人員整理が盛んに行われた際にそれを制御するため
考え出されたものであり、その考えは、企業は広大な土地を持ち、
その含み資産もあり、不況も右肩上がりの経済の中での
景気循環の一場面であって2,3年我慢をすれば景気も
立ち直るといった状況の中で、なおかつ、終身雇用、
年功序列制度という雇用環境の中で起きた事件を解決するために
裁判所が生み出した判断基準である、とするものです。
しかし、その後の産業構造の転換による、いわゆるIT産業を
中心とした軽薄短小産業の隆盛、そしてバブル崩壊後の
失われた10年をへた金融不況のなかで、資産を持たず、
したがって金融機関からの借り入れが非常に厳しい現代型企業に
とっては、営業利益の赤字はおろか、減益傾向が続くだけでも
融資がたたれる可能性があります。
雇用環境も正社員中心の人員構成から非正規の社員が全体の構成の
3分の1を超えるような状況の下では、従来の大企業中心で
正社員の雇用を前提として考え出された4要件をクリアした後で
なければ人員整理を認めないという考えでは、とても企業が
存続できないという現実が生じています。
企業が行う雇用調整とは通常、希望退職、
退職勧奨、整理解雇などを総称して指します。
整理解雇とは、一般に「企業経営の合理化、または
整備に伴って生じる余剰人員を整理するために
行われる解雇」と説明されます。
解雇は、会社側が一方的にする行為であり、大別すると
普通解雇と懲戒解雇に分けられ、そのなかでさらに
普通解雇は、普通解雇(狭義の意味)と整理解雇に
分類されて考えられています。
いずれにしても解雇は会社側が一方的にする行為であり、
普通解雇は従業員側に落ち度がある場合で、整理解雇は
基本的に従業員側に落ち度はなく、専ら会社側の事情・都合で
なされるものとされています。
日本では原則として、法律では解雇自由となっていますが、
その解雇権を行使するにあたっては「解雇権濫用の法理」により
厳しくチェックされ、その合理性が問われます。
整理解雇とは、企業経営の合理化に伴って
生じる余剰人員を整理するために行われる解雇をいいます。
経営の合理化というまさに使用者側の事情による解雇ですが、
労働者の雇用に対する期待と生活の経済的基盤を一方的に
奪うことになりますので、厳しい制約を受けます。
裁判所は、一般に、4要件を必要とする立場に立っています。
4要件とは、
(1)人員整理ないし整理解雇の必要性のあること。
(2)整理解雇に先立って解雇回避努力をしたこと。
(3)人選が妥当であること。
(4)解雇の必要性などについて、説明や協議を尽くしたこと。
ちなみに、これら4つの事情を総合的に考慮する裁判例も
ありますが、恣意的な整理解雇といわれないためには、
4つの要件をすべて満たすようにすすめていくのが無難です。
必要性とは、客観的に高度な経営上の必要性があれば
足りるとされています。
解雇回避努力とは、使用者は、他の手段によって
整理解雇の回避に努めなければならない信義則上の義務を
負っていると解されています。
そもそも労働者は、解雇の場合を除き、
使用者から退職を強制されることはありません。
一方で、労働者の自発的な意思を尊重する態様であれば、
使用者が労働者に対して退職を勧めることも、
違法ではありません。
ですが、退職勧奨の際に、嫌がらせをしたり、
あまりにも執拗な対応をとったりした場合には、
不法行為として損害賠償の対象となります。
実際、裁判例で問題となった事案の一例では、
対象者にのみ約2ヶ月間にわたり具体的な仕事をあたえず、
その後も仕事らしい仕事をあたえなかったうえ、
その間も他の従業員からホワイトボードに「永久に
欠席」と書かれたり、不合理な座席の移動を
命じられたり、侮辱的な発言を受けたり、ホワイトボード
から名前が消されたりなどの頻繁な嫌がらせがなされた
事案があります。
この事案において、裁判所は使用者に対して慰謝料の
支払いを命じていますので、留意が必要です。